紙本著色源氏物語絵巻(絵十五段、詞十六段)
基本情報
- 台帳ID: 201
- 管理対象ID: 35
- 種別: 絵画
- 国: 日本
- 時代: 平安
- 指定年月日: 1952年03月29日
- 都道府県: 愛知県
- 所在地: 愛知県名古屋市東区徳川町1017
- 所有者名: 公益財団法人徳川黎明会
出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋
概要
『源氏物語絵巻』は、紫式部によって執筆された世界最古の長編小説『源氏物語』を題材に描かれた、現存する最古の物語絵巻です。平安時代後期の12世紀前半(1120年〜1140年頃)に制作されたとされ、詞書(ことばがき)とそれに対応する絵を交互に配置する形式をとっています。徳川美術館が所蔵する本作品は、絵十五段、詞十六段から構成されており(他に五島美術館が四段を所蔵)、平安貴族の雅な生活と繊細な感情表現を今に伝える至宝です。
歴史的背景
本絵巻は、鳥羽上皇を中心とする宮廷周辺で制作されたと考えられています。かつては平安時代の宮廷絵師・藤原隆能(ふじわらのたかよし)の筆と伝えられてきましたが、現在では高度な技術を持った複数の絵師や書家による共同制作(寄合書き)とする説が有力です。伝来については、江戸時代初期には尾張徳川家に伝わっていたことが記録されており、以後、同家を代表する重宝として受け継がれてきました。その歴史的・美術的価値の高さから、1952年に国宝に指定されています。
特徴と魅力
本作品は、平安時代の「女絵(おんなえ)」の最高傑作として知られ、以下のような独自の美術的特徴を備えています。
- 引目鉤鼻(ひきめかぎばな): 登場人物の顔を、細い一本の線で目を描き、鉤(かぎ)のような形で鼻を表現する手法です。具体的な表情を抑えることで、見る者の想像力をかき立て、奥深い感情を表現しています。
- 吹抜屋台(ふきぬきやたい): 建物の屋根や天井を描かずに、斜め上からの視点で室内を見下ろす構図です。室内で繰り広げられる密やかな人間模様を俯瞰的に捉えることができます。
- 作り絵(つくりえ): 墨で描いた下絵の上に厚く彩色を施し、さらにその上から改めて墨線で輪郭や顔の造作を「描き起こす」技法です。非常に豪華で重厚な色彩が特徴であり、当時の貴族社会の華やかさを象徴しています。
- 抒情的な表現: 画面全体に漂う「もののあはれ」の情趣が魅力です。衣服の文様や調度品、庭の草木にいたるまで、登場人物の心情を反映するように緻密に描き込まれています。