釈摩訶衍論

基本情報

  • 台帳ID: 201
  • 管理対象ID: 753
  • 種別: 書跡・典籍
  • : 中国
  • 時代: 唐
  • 指定年月日: 1959年06月27日
  • 都道府県: 滋賀県
  • 所在地: 滋賀県大津市石山寺辺町123
  • 所有者名: 石山寺

出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋

概要

『釈摩訶衍論(しゃくまかえんろん)』は、大乗仏教の重要な論書である『大乗起信論』を注釈した書物です。滋賀・石山寺に伝来する本品(5巻)は、中国・唐時代に書写された極めて貴重な写本であり、日本の仏教、特に真言密教の教理形成において多大な影響を与えた聖典として知られています。

歴史的背景

本作は唐時代の中国で成立・書写され、奈良時代から平安時代にかけて日本へもたらされたと考えられています。本論はインドの龍樹(りゅうじゅ)菩薩の著作と託されており、その真偽を巡る議論もありましたが、真言宗の開祖である空海(弘法大師)は本作を極めて高く評価しました。空海は『十住心論』などの著作で本論を重用し、真言密教の根本教理を裏付ける重要な論書として位置づけました。そのため、平安時代以降の密教寺院において、宗派の根幹を支える聖典として厳重に伝承されてきました。石山寺は古くから観音信仰の聖地であるとともに、膨大な仏教典籍を蔵する文化の拠点であり、本作もその歴史の中で守り伝えられてきました。

特徴と魅力

本作は、その歴史的価値のみならず、書写された当時の技術や文化を今に伝える美術的・資料的価値を併せ持っています。

  • 唐代写本の白眉: 唐時代の洗練された楷書体で記されており、一字一字が厳格かつ端正に書写されています。当時の中国における高度な書写技術を直接確認できる貴重な資料です。
  • 密教教理の源流: 内容面では、宇宙の真理や悟りの境地を深く論じており、空海がその思想体系を構築する上での理論的支柱となった点が重要です。
  • 良好な保存状態: 千年以上という長い歳月を経ていながら、墨の色や紙の質感が良好に保たれており、当時の息吹を現代に伝えています。
  • 石山寺伝来の由緒: 聖武天皇の勅願によって創建された名刹・石山寺には、膨大な「石山寺一切経」をはじめとする貴重な典籍群が伝わっています。本作はその中でも、唐代写本としての希少性と教理上の重要性から、独立した国宝として高い価値を認められています。