絵画

鶉図

中国・南宋時代
東京都港区南青山6-5-1
公益財団法人根津美術館 / 東京都

概要

「絹本著色鶉図」は、中国の南宋時代に制作され、日本に伝来した写実的絵画の最高傑作の一つです。秋の風情が漂う中、粟の茎の傍らに佇む一羽の鶉(うずら)を精緻な技法で描いており、東アジアの花鳥画を代表する至宝として知られています。

歴史的背景

本作は、南宋の宮廷画家であり、鳥獣画の名手として名高い李安忠(りあんちゅう)の作と伝えられています。日本へは中世に伝来し、室町幕府の将軍家が所有した「東山御物(ひがしやまごもつ)」の一つとして、極めて高い格式を誇りました。画面には足利義持の所蔵印である「公道」の印が押されており、中世から近世にかけての茶の湯や鑑賞の文化において、最高峰の「唐絵(からえ)」として珍重されてきた歴史を物語っています。

特徴と魅力

本作の魅力は、極めて高い写実性と、小画面の中に凝縮された気品ある空間表現にあります。

  • 驚異的な写実性: 絹の地に精緻な彩色を施す技法が用いられ、鶉の羽毛一枚一枚が細い筆線で描き分けられています。その質感やふっくらとした体温までもが伝ってくるかのような生命感に溢れています。
  • 緊張感のある表現: 鶉が向ける鋭い視線や、今にも動き出そうとするポーズは、静止画の中にダイナミックな時間を感じさせます。
  • 南宋院体画の精華: 背景の粟の穂や足元の小さな草花も繊細に描写されており、画面全体に静謐で格調高い空間が広がっています。
  • 日本美術への影響: この「小画面に凝縮された宇宙」とも言える表現形式は、後の日本の狩野派や土佐派などの鳥禽画に多大な影響を与えました。中国美術史における到達点を示すとともに、日本における中国絵画受容の歴史を象徴する作品です。

出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋

間違いを指摘する

鶉図

201/88